第26話 生温いクエスト

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第26話 生温いクエスト

 ミア達4人は、昼間でも薄暗い鬱蒼とした森を歩いていた。見上げてようやく高い枝葉の隙間に空が見え、地には湿ったシダや苔がわずかな木漏れ日を浴びている。  ハワゼット家が所有してる山を開坑するため、魔物の生態状況を調べる依頼を受けていた。この三日間のんびりと隈なく調査していた。 「ギル、今日も近場で済ませちゃって悪いな」 「重っ!夜に雨が降るぐらいなら、今日ぐらい休めば良いじゃないですか」  ガイがギルの肩に手を回し体重をかける。既に道といったものはなく、巨木が茂る森の中は木の根が張って足場が悪い。  ギルを羽交い締めにしてニヤニヤしながらガイは、ギルの耳元で小声で話す。 「付いてきてるよな?」 「分かってるよ。離して」 「なんだ、面白くないなー」  近くでミアがしゃがんできのこを採っている。採取の我慢が出来なかったらしい。しっぽが左右に、ピクピクしながらしなっている。 「ギル、あれ、どう思う?」 「え、なんですか?」 「ミア、緊張してるな。緊張というか、警戒だな。ミアは、分かりやすいな」 「確かにミアは無口なわりに、耳としっぽはちっとも大人しくないかな……」  ガイはギルを解放すると、今度はミアを拾い上げて荷物のように回収した。 「ミア、こんなところでそんなに集めてたら、奥に行くまでに持ち切れなくなるぞ」 「……はい。ごめんなさい」 「ロゼに追いつくぞ」  ミアはしばらくガイの小脇に抱えられて、しっぽがプラプラさせる。  この頃のミアは、マイペースだ。今まで気を張っていたのが抜け始め、集団行動の苦手さが出まくっている。  ミアを抱えたガイの後ろをギルはゆっくりとついて行く。そんなミア達の更に後ろをついて行く者が居た。  ジャレグは距離を保ちながらコソコソとミア達を尾行していたが、ガイ達はそれを森に入る前から気付いていた。 「なんだ、こんな森の調査なんて、生温い依頼受けやがって。しかも、ダラダラのんびり散策して、遊んでんのか、アイツら!」  ジャレグは苛々が隠せず、ミアもその気配が分かるぐらいだった。  ミアの追跡など余裕かと思われたが、ミアがきのこを集め始めた辺りから、事あるごとに、窪地に足を取られていた。時々、頭よりも深く落ちて、這い上がるのに時間を取られる。  ズボッ…! 「くっそ、またか!穴ぼこだらけなのか?何でアイツらは落ちないんだよ!」  ジャレグが落ちる穴は自然に出来ているものだった。ただ、ミア達によって穴に見えないトラップが施されていた。  地味な嫌がらせだが、十数回も続くとジャレグの苛立ちは積もり、冷静さに欠けてきた。 「それでも、やつらは俺に気がついていない。ミアを懲らしめてやる」  物騒な事を妄想し、ジャレグはミアが1人になるのを狙った。  しばらくすると、ミア達が立ち止まった。 「モンスタースポットの可能性が高いな」  ガイが、ちょっと真面目そうに言い出した。  森の中に大きな窪地が現れた。魔物が巣営や根城にするにはちょうど良い広さと深さの窪地だ。ミア達は、窪地を覗く崖の上に居た。 「あの奥の茂み辺りに群れがいるかもしれない。何がいるのか、俺たちが見てくるから、ミアは待機していてくれ。くれぐれも()()()()()()()()()」 「うん」と、ミアが返事をした。  そう言って、ガイとロゼとギルが窪地の左右に分かれながら、ミアを置いて移動した。木の陰に隠れたジャレグは聞き耳を立てていた。  ガイ達の気配が遠くに消えると、ミアの背後にジャレグが忍び寄る。ミアは、崖の下を眺めている。  ミアが崖の淵ギリギリまで足を進めると、ジャレグはミアの背後に忍び寄りその背中を思いっきり蹴り付けた。 「あっ!」  蹴られたと同時に、足元を踏み外しミアは崖の方によろめいた。  ミアは、態勢を立て直せず崖下へと落下するも、身を翻しながら、着地する。  ドサッ……  崖の真下は、枯れた枝葉で土で柔らかく、怪我は免れた。  ミアが上方に振り返るとジャレグが苦々しい顔をしてミアを睨んでいる。思いっきり蹴り飛ばしたハズなのにミアに怪我がある様子もなく、高い場所からの落下なのに上手く着地している。 「何故だ?」  ジャレグが怒鳴り散らし、木を蹴り地団駄を踏む。  その音に反応したのか、窪地の奥の茂みが騒めき始めた。
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