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 スザナの街はムヘーレスの北の拠点だけあって、そこそこの規模を誇る。 メイン通りは綺麗に舗装されていて、乾物屋の跡取り息子のフレイザーはいつもの通り仕入れを市場で済ませると、通り沿いにある店に戻る途中だった。  品物はプシュレイの港から行商(キャラバン)が運んでくるものが殆どだ。 エストリア産の商業用品や、その他の大陸からの名産品など。  それを買い付けて商品として売る。彼は仕入れの仕事を引き継いだばかりだ。 17歳・・・もうすぐ18になる彼は 15で学校を卒業してすぐに家業を継いだ。そろそろ連れ合いを探して 身を固めてもおかしくない年頃だ。  この街の学校を卒業すると、男子は自分の様に家業を継ぐ者もいれば、裕福なものだと、高等学校へ進学するか他国に留学したりする者もいる。  隣国ベルヴァンドに近衛兵として志願して行く者も。  ただ最近ベルヴァンドの良い噂は聞かない。何人かの仲間も数年この街に帰ってこないのだ。  一方女子は大半は花嫁修業で家事手伝いや家業を手伝ったり、たまに進学する者もいるがそう言う人物は稀である。たいていは卒業と同時に親が決めた年上の許嫁に嫁いでしまう。女子は結婚は早いのだ。  北の大陸はまだ保守的な土地柄で、女子は早く良い伴侶を見つけて、よき妻となり内助の功を発揮して子を成すことが良しとされていた。  石畳の道を品物を持っての帰路の途中、 彼は飴屋のショーウィンドウを見つめている一人の年頃の女性に気が付いた。  すらりと背が高く、銀の長い髪をきっちり編んでまとめている。  冬用の革のドレス姿で、質素な格好ながらも気品があった。何よりも彼の昔の恩師に似ていた。その恩師よりも彼女の方が 妖しい魅力があった。 ―まさか・・・。 フレイザーは思い出した。 数年前突如引っ越して行った友人のことを。 女だてらに強くて、いつも一緒に遊んでいた彼女を・・・。 恩師の娘である彼女・・・に違いない! 「ステラ!!」 その女性は振り返る。顔立ちもちっとも変わってないが、なんてきれいになったんだろう。何より女らしくなった。もうすっかり大人の歳だし当然なのだろうが それを差し引いても彼女は美しい。 彼女は彼を見て、驚いたように眼を見開き 顔を綻ばせた。 「フレイザー!!」  「やっぱりステラだ!お前・・・すごい久しぶりだな!急に引っ越しちまって・・・。」 「ごめん、あの時は色々あって急遽ここから離れなくてはならなくて・・・。」 「そうかそうか!でまたどうして急に戻ってきたんだ?先生は?」 「・・・・・・長くなるわ。」   「そっか、ちょうど俺たち夜酒場で久しぶりに皆で会うんだ?来ないか?」 * * * 無事移動呪文でスザナに移動した一行は、宿を取り、夕方まで散策となった。 コウはちょっとオーキッドの書斎で見つけた本を読みたいといい、部屋に引きこもった。 他は情報収集もかねて散策と言うことになり宿に夜集合となった。 リーディはステラがそわそわしているのに気が付いたのだ。懐かしい自分の育った街を見てみたいのだろう。 なので、彼がそう言う提案を出して、昼下がり解散となったのだ。  彼は少しだけ胸騒ぎがしたが、そんなことで彼女の自由を妨害するのもどうかと思い、その感情は露わにしなかった。 「さて・・・俺もいろいろ情報収集するか。」 そうひとりごちて、昔彼女を初めて見た広間に向かって行った。
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