0人が本棚に入れています
本棚に追加6
―どうして・・・リーディ!
私はコンラッドの手を振り切り、道を戻って駆けだした。背後から誰かの追いかける足音・・・。
こんな時、懸念が再び甦る。不謹慎だけど。彼にある女性の影だ。今は感じはしないけど、やっぱり不安になる。
悔しいけど、彼は素敵なんだ。目の前のコンラッドも十分魅力的だけど、その彼すら霞んでしまうほど、リーディの惹き付ける力はすごい。
生まれながらの王子。
女性はいくら彼が寡黙にしていても惹かれてしまう。
レオノラさんのこともそうだけど、
私すごく気になるの。
―やだ、こんな嫉妬深い自分。
そう思ったその刹那、
グイッと手首を掴まれる。コンラッド?
いや違う・・・触れられ慣れたこの感触・・・。
「おい!なんで逃げるんだよ。」
リーディだった。
「逃げるも何も・・・・・・さっさとあの人の方へ行けばいいじゃない。」
「・・・お前こそ!求婚受けてたじゃないか。」
「別にされただけで受けてないしッ!!」
私だけ一人で興奮して憤って、
バカみたいじゃない。
そう、自分にもいろいろな負い目というか
あるんだ。まだ彼に自分の身も心もすべてを許してないのに・・・
他の女性のことを嫉妬したり。
何やってるんだろう・・・私。
するとコンラッドと彼に付き添っていた
女性が一緒に追いかけてきたのだ。
「ステラ…どういうことなの?」
コンラッドは驚いたように私たちを見、
「ああーそういうことなのね。」
少し遅れて追いついたリーディと一緒にいた女性は、何かを理解したように頷いている。
「というか、ジョゼットさんまで。」
「あら若領主様。」
え?彼女は、コンラッドの知り合いなの?
* * *
俺は女の頼みを承諾してサロンを出て、宿への帰路を急いでいた。女も宿までついてゆくと聞かないので、勝手にしろと言って並んで歩いていたのだ。
女の情報に対する条件は先ほどの誘惑とは全く違うものであった。
いや、情報提供を真摯に呼びかけたからこその交換条件だったかな。
女はいわば、 街でいう裏でのお目付け役と言うか、
女スパイ・・・というのか。名前はジョゼットと言うらしい。
何気にあの洋館の女主人だった。
通りをまっすぐ歩いて小さな学校の傍の角を曲がった時だ。ガス灯の下二人の男女連れがいた。何だろうかこの時間に。
しかし、よく見た瞬間それは・・・見慣れた銀の髪の女─ステラに一人の身なりの良い男性が跪き頭を垂れていた。まるで姫に忠誠を誓う騎士のような…。
そうこれは求愛のポーズだ。
しかしステラはその男の行動が予想外だったのか、驚いたように何かを言っていた矢先、俺と目が合ったのだ。
瞬間彼女は逆方向へ走って行った。
俺は何か誤解されてると気が付いたし
逆に彼女のさっきの状況を問い詰めたくもあった。
あの身なりの良い男?とも一瞬目が合ったが、どこかで見たことある気がしたのだ。
でもそんなの無視して俺は彼女の腕を掴んだ。
そして今、ステラと言い争いのさなか
ウェーブの髪の例の男とジョゼットがやってきたのだ。二人は顔見知りのようだった。
「彼女はスザナの街の裏のお目付け役というかね。」
その男にそう紹介され、
ジョゼットは緩くカールがかかった豊かな黒髪をかきあげて微笑んだ。
「ふふ。こういう仕事のせいかいろいろ情報を知っているから」
「で、ステラ…彼は?」
俺はステラの顔を見る。少しバツが悪そうだ。
「私の幼馴染で、スザナの若領主のコンラッド」
ああ・・・思いだした。
4年前彼女を助けるために俺に救いを乞うてきた…青年だ。
向こうも俺の顔をまじまじ見て何か思いだしたか、感じるものがあったようだ。
「この方は?ステラ?」
「仲間の一人で・・・」
逆に今度はあっちが問うてきたので
ステラがそう言いきる前に俺が自ら名乗った。
「リーディ・ソル ヴァーニング(※苗字はセシリオの借りている)という。」
そう言いながら俺はステラの掴んだ手首を一度離して、掌に組み直す。それを見ていたジョゼットはもう心得たように再び頷いた。
「若領主様、お相手への求愛無理だったみたいね」
* * *
その後俺たち4人は色々話した。
場所はスザナの中央通りのカフェバーだ。
結論からして俺達はベルヴァンドに行かねばならないと言うことで。実のところジョゼットが出した条件はそれだったのだ。
ベルヴァンドのことを調べてほしいと。
スザナの若い志願兵が帰ってこないと言うこと・・・。
彼女は俺が自分の誘惑に乗らない骨のある剣士だと見込んで頼んで来たわけだ。まぁ、俺もベルヴァンドのことを気になって、彼女に尋ねたくらいだからな。
ステラが旧友達に会った時もその話題が上がっていたそうで、スザナの若領主も懸念していたことであった。
そして憚りに立ったとき、その若領主に呼び止められた。
「もしかして・・・君は・・・。4年前のスフィーニの・・・」
そう、彼も覚えていたらしい。
俺は頷いてこう答えた。
「昔の話だし、今が大切なのでステラには言わないでほしい。」
「そっか・・・。」
彼はくしゃりと笑った。
「君なら・・・僕は勝ち目はないな。」
「悪いな。」
「ただ・・・彼女を悲しませるようなことはしないで欲しい。」
「約束する。」
俺が頷くと、若領主はタバコ吸ってくると言い外へ出て行った。その後ろ姿を見届け ステラは愛されていたと思うと、なぜか恋敵であるのに妙に嬉しかった。
そして、俺は宿に仲間を呼びに行ったんだ。

最初のコメントを投稿しよう!