めぐる季節の向こうに

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「お隣、お引越しが決まったみたい」  ため息混じりの母の声を、私はナツの試合の日の朝に聞いた。 「え……」  私の前で、しばらく黙り込んでいた母が口を開く。 「ごめんね、はるか。お母さんちょっとホッとしてるのよ。これであの事故から、一区切りつけるんじゃないかって」  私は何も言わなかった。  あの事故から――ただその言葉だけが胸に深く残る。  お隣に住むナツと私は、親同士の仲も良くて、家族でバーベキューをしたり旅行に行ったり、小さい頃からまるできょうだいのように育ってきた。  六年生のあの日まで、ずっと変わらずに。 『中学の制服の採寸に行くんだけど。はるちゃんも一緒にどう?』  何気なく誘ってくれたナツのお母さんの言葉に、私も気軽にうなずいた。  たまたま一緒に行けなかった母を残して、私とナツは、ナツのお母さんの運転する車に乗り込んだ。  まさかあんな事故に遭うとは思いもせずに。
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