わたしの自叙伝

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私が風俗嬢としてどうして働くようになったのか。それは馬鹿げたよくある話だ。 男に騙され借金を背負い困窮のあまり風俗に手を出してしまったのだ。 19歳という若さで田舎から飛び出した私は世間の怖さを知らない純粋無垢で、素直に恋をしてしまった。 俗に言う世間知らずのバカな女という奴だ。 学生の頃は禄に学校行かず不登校になり自分の部屋に閉じこもり、親に何か口出しされると癇癪を起こし泣き叫び手に負えないほどのめんどくさい高校生だった。 それでも支えてくれた親、友人、先生など周りの力を借りて再び学校に登校できるようになり無事に卒業することができた。 卒業後、親の後押しもあってか自分自身を改めようと家を出て自立することに決めた。行き先は京都。幼い頃から何度か訪れていた場所でもあったので迷いなく京都へ旅立った。京都ではアルバイトだったが就職先も決まり、その仕事一本で生活をする日々が始まった。 そこで出会ったある男によって私の運命が決まり生活が一変したのだった。 OFP 大丸フードプロジェクト、関西を起点とし関東にも進出し店舗展開をしている飲食業界では名が広まる大手企業だ。 その男は総料理長で各店舗のフードメニューや味を決める核となる重要人物の一人だった。 その名は「田中正人」 29歳、既婚者で当時は離婚調停中。子供はいない。身長は170㎝もあるかないか体格は肥満体型でウエストが100㎝越えだ。料理人ということもあり髪は短髪、顔は丸々として眉毛は綺麗に切り揃えられ目は細長、笑うとタバコのヤニで染まった歯が顔を出す。いつもヤクザが持っていそうなセカンドバックを提げてお店にやってくる。そのカバンの中にはお札が束になって押し込まれていて、わざと金があることをチラつかせていた。車はセルシオに乗っていて車体を少し下げていていわゆるヤン車というヤツだ。 私の勤務先はかつて阪急電鉄の河原町駅より、駅と直結している地上8F建の四条河原町阪急百貨店内、レストラン街の7Fの「若杉水産」という回転寿司屋で働いていた。まだ、新装開店前でオープニングスタッフとして急募しており、求人誌をめくると大きめにその求人欄が載っていて、時給もそこそこ良かったので職を探さなきゃと勢い任せで応募した。若かったこともありすぐに採用され、働けることになった。今現在、四条河原町阪急百貨店は閉店したが今は京都マルイとして生まれ変わっている。 そこへたまにお店の様子を伺いに関係者を数人引き連れて店長やスタッフに話かける人物がいた。私の第一印象は丸い顔をした話しやすそうなおっちゃん。私も何度か見かける度に「お疲れ様です」などと軽く会釈をして、たわいもない話をして会うたびに話しやすい間柄になっていった。そんなある日も私を見かけるなり近寄ってきて、その頃はガラケーに携帯ストラップをつける時代でその付いてるストラップを横に揺らし未成年の私をおもしろがり遊んでいた。 それが、田中正人という男だった。 純粋無垢な私はなにも怪しさを感じず、何度か会うたびに大人の彼に興味を惹かれてしまっていた。 田中は話上手で、遊ぶことなら天下一品。何をしても上手にこなす。カラオケやボーリングなど田舎育ちの私は友達に家にお泊まりする事はあっても歓楽街で遊ぶ夜遊びをした事がなく、何もかもが新鮮で楽しかった。いつもお酒を浴びるように飲まされ、一晩中遊び尽くし朝を迎えていた。そのまま仮眠して二日酔いで仕事をする、そんな無茶をする生活ができていたのは若さ故のエネルギーがあったからだ。 そんなある日のこと、仕事終わりにいつものように友人と田中とその連れの4人で職場近くにあるカラオケ屋に向かった。狭い部屋でガタイのいい男2人に挟まれると窮屈感が増してさらに狭く感じた。ドリンクを各々オーダーして酒を片手に乾杯。歌を順に披露していった。田中はサザンオールスターズが好きで桑田佳祐さんの声真似して聞き惚れるほどの歌声だった。その他にも研ナオコさんなどのモノマネをして場を盛り上げてくれた。 その日も何曲か歌を披露してくれて盛り上がり酒を呑み大いに騒いだ。普段も飲み放題で何杯も飲まされていたが、その日はいつも以上にたくさん飲まされた。カクテル、焼酎、ワインなど俗に言うチャンポン飲みをさせられ、途中何度か気を失い、トイレに駆け込んではリバースを繰り返した。酔って吐くのはいつものことだけど、その日は何故か強い眠気に襲われた。 眠気を取ろうとみんなに便乗してタバコに火をつけて煙を吸った。田中はタバコを吸う時に必ずやる癖がある。癖なのかワザと格好付けでやってたのか今更どうでもいいが、口にタバコをくわえポケットからジッポのライターを取り出すと蓋を片手で器用に開け火をつけて火がついたらカチッとその片手で蓋を閉めることができる。ホント何をさせても器用な人間だ。 薄暗い室内は部屋中に白い煙が漂い、側から見ると近寄りにくい闇部屋となっていただろう。私は寝たり起きたりを繰り返した。 深夜を跨いだ頃に眠気と酔いも混ざりグダグダとなっていた私を田中は無理やり起こし帰るぞと手を引いた。お会計を済まして、エレベーターで降り皆と共に外に出た。外の空気は涼しく感じて酔って火照った身体にはちょうど良い心地。みんなのことを家に送るよとお酒を飲まない田中が声をかけていた。私は駐車場へ向かう途中も路上で吐き千鳥足でまともに歩けないぐらいになってなんとも情けない状態になっていた。私は彼の車の助手席に座らされてみんなと会話をすることもなく、眠気に勝てず眠りに入った。各々の自宅周辺まで下ろして、その都度ドアの開く音に反応して寝起きを繰り返した。 車内が静かになり気が付いてうつろうつろしながらも目を開けると、車に乗っていたみんなの姿がなくなっていた。周りの景色を見渡すとそこはホテル街。 「どこ?ここは?」と話しかけると、「起きた?もうみんな降ろして君だけだよ」 周りは暗いがピンクやイエロー、オレンジのネオンの光が煌々と辺りを照らしていた。 ————ヤバイ‼︎このままじゃやられる‼︎———— やられる‼︎と必死で自宅に返して下さいと何度も説得したが時すでに遅し。「何もしないし大阪まできて今から京都まで帰るなんて嫌だ、俺も眠いしとりあえず寝にいこう」と私の言葉も虚しくホテルの入り口の垂れ下がった赤い切れ目の入ったカーテンを潜り車を駐車させた。 車から降ろされると歩いた反動で胃に負荷がかかり、また気持ち悪くなりホテルのエレベータ内でリバースしてしまったのは薄っすら覚えている。 とにかく眠い。 眠気と酔いと気持ち悪さでふらふらになりながら歩き、ベットに意識がぼんやりしたまま倒れ、身体を動かす力がなくなりそのまま寝てしまっていた。 数分後シャワーの音が聞こえて薄っすら目を覚ました。ガチャっとドアを開けるが音がしてタオルを巻いた田中が出てきた。部屋は薄暗く間接照明の灯りだけでムードある空間となっていた。冷蔵庫に手を伸ばし水の入ったペットボトルをがぶ飲みし、「起きた?」と声をかけてきた。私は軽く頷いた。腹回りに巻いたタオルはお腹の出っ張りで引っかかりいいバランスを保っていた。彼は口についた水を腕で拭いながら私の側にやってきて「ちょっと立ってきた」とタオルの上からペニスを触りベットに近づいて、慣れた手つきで私の身体に触れてきたのだった。そのまま私の身体に乗り馬乗りにされた。 何もしないっていったじゃん!!と私の叫びも虚しく…もがき抵抗したが手遅れ。 上半身は途中まで脱がされ私の小さい胸が露わになり愛撫して身体を舐めまわされた。いや、そういえば私生理だよ…「血が出てるからやめて」と叫ぶと「別に血が出てても構わない、エッチするの久々だろ?俺としよう!」 耳から首、胸と順に舌で身体の線に沿って舐めまわされた。 やめて、やめて…! 気持ち悪い 重たい体重が私に乗り身体の自由が奪われた。 動けない。 彼はレイプを楽しんでいる。息も荒くなり興奮しているようだった。 身体を舐めながら正常位の体位になり生理で淫部は血まみれなので指入れはしてこなかったが、穴の位置だけ確認して自分のペニスを摩り刺激してペニスを肥大させて、滑りをよくするため唾を擦り付けて私の陰部にペニスを押し付けてきた。 君、狭いんだね?もしかして初めて?いくよ、中に入れるよ、、グッと中まで挿入してきた。 一瞬痛みがくるかと反射的に息を止めた。痛いかなと思ったがそうでもない。相手のペニスの大きさもそこまで大きくなかったからか痛みは感じなかった。気持ち良いという感覚より気持ち悪いという感覚、自分の中にヤツのペニスが入っている。 腰を動かしてペニスが出入りしている。なんなんだろうこの感覚。 気持ち悪い やめて… 田中は腰を動かしながらやっぱり生理だと血の滑りもあっていいね!気持ちいいよ。君も気持ちいいでしょ? 気持ち悪いからやめてと身体を動かすと私の両手を上から力強く捕まれ、さらに動けない状態になり力ずくで腰を動かしていた。 彼はピストンを何度も繰り返し一気に頂点に達すると身体をうねらせ射精していた。 ペニスを抜くと赤い血と白い精液が混ざったコンドームを外してティッシュに包めてゴミ箱に捨てていた。 彼は立ち上がると、「ベットシーツが血に染まったね」と笑みを浮かべていた。 自分の巻いていたタオルを私に渡して汚したシーツをそれで拭かせたのだった。 射精すると眠くなるタイプなのか布団の中に入り疲れもあったのか寝に入っていた。 私はまた気持ち悪くなりトイレで嘔吐をして、汚れた体を洗うためシャワーを浴びた。 実ははじめての性行為だった。恥じることだが初体験をこの男に奪われた。 なんとも切ない話だ。 過去を振り返るとファーストキスも小学4年生の時に母親の友人に奪われた。 隣の部屋には両親がいるのに部屋の明かりを暗くさせられ、布団に寝させられて上から覆いかぶさってきてなにもわからない幼いわたしにキスをせがんできた。静かにじっとしてればいいからねと、何度もそう言い唇を重ねてきた。舌も絡められた。生まれて初めてのキスとディープキス。 終わりに、お父さんとお母さんには内緒だからねと口止めさせられた。勿論わたしはその約束を守った。とても口が裂けても言える内容ではない。幼い私の脳裏にはあの時受けた体験が今でも焼き付いて残っている。 気持ち悪い。 どうしても消えない記憶。 こうして初体験がどちらもレイプとして私の身体に刻まれた。 そんな性体験が私が知らず知らずのうちに心が荒んでいった要因だろう。 昼ぐらいまで田中は寝ていてようやく起きると私の家の最寄駅まで送ってくれた。車を歩道側に停車させて、私を下ろす前に強引に抱きつかれ口付けしてきた。また遊んでねと言い残し車を走らせ去っていった。 あんなに強引にレイプされて嫌な想いをしたのに田舎から出てきた私には刺激的に感じたようで気持ちが高揚していた。---これがレイプなんだと。 高校生の時に援助交際やレイプなどを描いた少女コミックが好きでよく読んでいてそういう危ない世界に踏み込んだことに浮かれていた。 本当に絵に描いたようなバカな女だった。 この日をきっかけに交際がはじまり、私は田中の愛人として尽くした。 後に調べて知ったが、田中は気に入った女の子にすぐ手を出して仲良くなりその子の飲むお酒などに睡眠薬を入れてレイプするという悪質なことをしていたとわかった。 
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