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四月
四月一日。
今日は、熊田さんが家に来ることになっている。
お菓子と紅茶の缶を用意し、お客様用のティーカップを、テーブルの上に並べて準備した。
「芽衣子、カップもう一個出して。五個よ」
母に言われて、首をひねった。
「なんで? お母さんと熊田さんと、私と千歳。四つでしょ?」
「だって今日は、涼くんも来るから」
「リョウくん?」
誰だ、それは。
「熊田さんの息子さんよ。高校生って言ってたかしら」
「は?!」
私は危うくカップを取り落とすところだった。
熊田さんに、息子がいたとは知らなんだ。
熊田さんと母が結婚すれば、私とは義理のきょうだいになるわけだ。
「なんでそんな大事なこと言わないのよ!」
「びっくりさせようと思って……」
「エイプリルフールじゃないよねえ……」
まさか五人で一緒に住む、とか言い出すんじゃあるまいな……。
母の言動は、予測がつかない。
ため息をつくと、もうインターフォンが鳴った。
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