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プロローグ
ガーベラの茎をチョキンと切り落として、母が「あ、そうだ」と言った。
私は顔をあげて「なに?」と尋ねた。
四月一日。エイプリルフールの朝のことである。
「今日はあんたにとって運命的な一日になるでしょう」
「はあ? 何それ?」
「あんたの今日の運勢よ。今朝、タロットしたんだけどね」
「ああ、はいはい。占いね」
お客様が来店して、私と母は、同時に「いらっしゃいませ」と声をあげた。
ここはフラワーショップ・EYE’S。
ありふれた地方都市の、ありふれた住宅街にある小さな花屋だ。
EYE’Sという名前は、苗字の「相澤」から取ったのだろう。隣町に、似たような名前のラブホテルがあると知ったときは、げんなりした。
もうちょっとおしゃれな名前の、もうちょっとおしゃれな店――たとえばパリの街角にあるような――だったらいいのに、と私は時々思ったりする。
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