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 男は空き巣だった。  その日も何軒かに入り、首尾よく金目の物を盗み出した。  隠れ場所として使っている竹林で品定めをしていた時の事だ。  ふと、目の端に光る物を見つけた。  そちらに目を向けると、その光が竹林の奥の方から漏れ出ている事に気付いた。 「一体なんだ?」  男は盗んだものをバッグにしまい、それを担ぐとそちらに向けて歩き出した。    やがて彼の目の前に、光っていた物の正体が現れた。 「竹が……光ってやがる」  白い光を放っていたのは、竹の節そのものだった。  彼の脳裏に、かぐや姫の話が思い起こされた。 「まさかな……」  そう言いながら、彼の目は光る竹に釘付けになっていた。    彼は考えた。  もしこの中から女の子が出てきたら。  その時には売り払ってしまえばいいのだ。  彼が盗品を持ち込む先は、何でも売り払ってくれるところだった。  竹から生まれた女の子など、珍しがって買ってくれる先はたくさんあるに違いない。  そうで無くても、光る竹なんて珍しいもの、高値で売れないはずは無かった。 「へへ、けち臭い空き巣生活ともこれでおさらばできる」  彼は一人でそう呟きながら、バッグに手を突っ込んだ。  取り出したのは大振りのサバイバルナイフ。  万が一、住人と鉢合わせた時に使うものだ。  彼はそれを振り上げ、思い切り竹に叩きつけた。
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