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悠紀の家
蔦に飾られた2階建の一軒家に独りで住んでいる。
兄と父はアメリカにいて、母は幼い頃に居なくなった。
でも、特に寂しいとも思わない。
どうでもいい。
一人でも生きていけるから。人の手なんて借りなくても余裕で生活できている。この腕のおかげで。才能が自分に宿っているせいで。
ああ、忌々しい。
若干年季が入ってきたイギリス製のトランクを元あったところに戻す。使い方が悪いのかもな、あと10年はもってもらわないと。相棒を亡くすのはもう御免だ。
間違ったことを正さねばならないのと同じように、物事が「理屈」で成り立っているのは真実なのだろう、きっと。
「シンプル」といえば聞こえはいいが、それが自身の出来が悪いからなのかもしれないと思うと、胸のどこかがチクチク痛むようだった。
「どうせ理解できていないことまで鵜呑みにするのなら、最後まで自分でいたい。」そう言って散っていった。
いつの間にこんなに捻くれてしまったのだろう、ふっとひとつ息を吐く。
どうせ孤独だ。
誰も自分を見つけてはくれない。
やっぱり救われない子なんだ、自嘲の嵐が吹き荒れる。
でも、それも仕方ないよね。
みんな、結局自分が一番だろう。
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