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「いい!? あのね、今日はセンの授業態度とか、そういうものも逮捕するためには知っておいたほうがいいかなって思って、見てただけなの!」
「逮捕とかそういうワードを軽々しく外で言うな」
「いつもは私だってもっといっぱい手挙げるし、思ったことはバンバン言うし! あと私、体動かすの得意だから、明日の体育こそセンより目立って見せるからね! カクゴしなさい!」
びしいっと指をつきつけたけど、センが立ち止まることなく歩き続けちゃうので、指が指し示す先はセンからお店になってしまった。
「はっ、話聞いてる!?」
「お前が明日も俺に勝てずに泣きわめくんだろ。聞いてる」
「全然違う! 明日こそ私が勝って、センが泣きわめくの!」
いっそいで追いついて、横を歩きながらなんとかセンの顔をのぞきこむ。
すると、センの冷たい瞳が一瞬だけ、かすかに動いた。
「俺は泣かない」
いつもより低い、私の知らない声がする。
えっ、と私がかたまった隙に、センはまたどんどん先に歩いていく。
「……ちょっ、ま、待ってよ!」
「くだらないこと言ってると、今日の焼き魚はししゃもになるぞ」
「ひぇっ」
焼いた魚は基本全部キライだけど、ししゃもは中でも別格だ。
くっ、むしろ私が弱みを握られてるのなんで!
我が家の食事当番がセンである以上、私の意思はセンの一言でどうとでもできる。
……あれ、待てよ?
センが私の好物を作ってくれないなら、私が
「自分で作ろうなんて考えるなよ。世界が終わるような大災害でも起きない限り」
瞬殺された。
「なっ、いいじゃん別に! ほらあれだよ、センばっかり食事作るの疲れないかな~って。ストレスたまっちゃわない? 私は未来の妻なんだし、たまには代わってあげてもいいよ」
「俺からしたら、お前が謎の黒魔術で生み出す生ごみを食べるほうがストレスだから平気だ。というか食材がもったいないから本当にやめろ、二度と台所に立つな」
「ひど!?」
まあ私だって、そりゃ、ちょっと失敗して黒くなりがちだな~とは、思ってるけど?
でもぎりぎり原型はとどめてるし?
もしかしたら、ずっと続けてたらいつか上手くいくかもだし?
「パッと見て料理に見えなかったら、原型とどめてるとは言えないんだよ」
「ねえさっきから私の心読んでくるのなんで!?」
く、悔しいっ!
こっちは冷酷冷徹冷静無表情なセンの心なんか少しも分かんないのに……っ!
手強すぎるよ、この詐欺師!
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