プロローグ

2/2
前へ
/11ページ
次へ
 そう、さっき言った通り、俺――――表譲(ひょうじょう)(セン)は詐欺師だ。  「(なき)」という偽名を使い、テレビやネットでは数十年に一度の天才詐欺師として騒がれている。  今のところ顔も名前も、性別すらバレてはいない。小学五年生という年齢も、知っている人間はいない。  それだけ個人情報が漏れてないにも関わらず、確か詐欺件数は十件を超えたはずだから、たぶん、今一番警察が捕まえたい犯罪者だ。  一方で俺と同居しているのは、警察に頼られる、正義感に燃える側の人間。  つまり追う者と追われる者、騙そうとする者と捕まえようとする者という敵対関係にある……わけだが。  ここまで読んで、「きっと彼氏の職業を知らないまま恋に落ちた彼女が告白しちゃって、これからだんだん惹かれ合うんだ! でも両想いかと思いきやある事件から正体がバレて、立場と恋の間で悩む二人の涙なしには語れない壮大な恋愛物語が」と考えた人はいるだろうか。  絶対一人くらいはいるはずだから正直に手を挙げてほしい。  そして今挙手した人は、床居優香という人間をなめている。  そんな常識人じゃない、確かに頭だけはいいが、事件の解決の仕方は大幅に一般常識から外れてる。  あいつが俺に告白してきたのは、俺の正体を知ったからだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加