ひかる、ひかる。

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「あああもう、兄ちゃんぜってー馬鹿にしてる!僕ほんと見たんだから!嘘じゃないったら!!」  そんな俺の態度が心底ご不満だったらしい弟は、口を尖らせて猛抗議した。 「最近、窓の外にさ、光が見えるんだよ。下の道を、ゆらゆらしながら通り過ぎてくのが見えるんだって……夜中の二時とか三時とかだよ?」 「お前、なんでそんな時間まで起きてんの。さすがに母さんに叱られっぞ」 「兄ちゃんだってスマホ見てるの知ってる!トイレに起きただけだし夜更しじゃないってば!ていうかそうじゃなくて……あれは火の玉とかそういうのじゃないかって言ってるんだってば!」 「火の玉ねえ……」  それこそ時代錯誤だろ、とついつい思ってしまう俺である。某有名な妖怪漫画とか、一昔前の学校を舞台にしたホラー映画とかだと、何故だか死んだ人の魂が火の玉になってゆらゆらと漂っていたりするらしいが。正直俺からすれば“なんで火の玉?”としか思えないのだ。  それがいわゆる魂っていうやつならば、生きている人間にも当然宿っているわけで。あんな燃え盛るようなものが体の中にあるっていうなら、お医者さんが堂々と研究でも発表でもしていそうなものではないか。でも、手術したら火の玉が体の中から出てきました、なんて馬鹿げた話は今まで一度も聞いたことはないのである。  つまり、本当に魂なんてものがあるとしても。それは人の目には見えないものだとしか考えられず、それが死んだ途端目に見えるようになるなんてあまりにもナンセンスなのだ。今回だってそう、墓場が近いわけでもない我が家の前の道を、なんで火の玉が毎日のように通過していかなければいけないのか。全く意味がわからない。 ――どうせ、自転車で誰かが通ったとか、お巡りさんが見回りしてたとかじゃねーの?  そう思ったが、弟は随分と怯えきっている様子だ。兄としては、このままほったらかしにしておくのも忍びない気持ちがある。しかしながら自分がいくら“人工の明かりに決まっている”なんて言ったところで、この少年は納得などしないだろう。 「じゃあ、確かめるか」 「へ!?」  そして出た結論は、至ってシンプルなものだった。正体がわからないから怖いのである。中身が判明すれば、きっと海もほっとして眠れるようになるはずだ。 「どうせ、今日あたりも現れるんだろ、その光。俺が一緒に起きてやるからさ、夜中こっそり見に行ってみようぜ。大丈夫大丈夫、なんかあったら兄ちゃんがちゃんとお前のこと守ってやるから、な?」
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