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オープニングのオープニング
好きだった絵本はシンデレラ、白雪姫、眠り姫、それにアリス。
特にシンデレラは絵本のページを捲るたびにドキドキした。
虐げられながらも頑張っている可愛い女の子が綺麗な魔法のドレスを着て、王子様と踊る。その姿だけでも幸せで可愛いのに魔法が解けても、
ガラスの靴を拾ってくれた王子様と幸せになるのだ。
正直、憧れた。
そんなものを何も分からない子供に読みきかせたら、
「私も」と子どもは思ってしまうだろう。
しかしながら、夢を見続けていられるのは大体幼児期から学童期までだろう。
それ以降は、じわじわと感じる自己認知、周りからの目、スクールカーストやらうんぬんかんぬんで子どものような夢をみることは出来なくなってくる。
私もそうだ。
可愛いものが大好きなのに、可愛いものを持つことも身に着けることも出来ない。
理由は簡単で「私が可愛くない」からだ。
どうしようもない不細工だと卑下している訳ではないが、
無難な造りの顔は素朴で特徴がなく、
いくら努力して化粧をしても化粧の印象だけが強くなってしまう。
そんなモブ顔の可愛くない奴が可愛いものを身に着けても可愛いが勝って、ただ滑稽な何かになってしまうだけなのだ。
だから私はいつの間にか、
可愛いふわふわのお洋服やパステルカラーものを見ても「可愛いですね」と素直に感想を述べるだけで、自分が使う物はアースカラーの無難なものを選んできた。
そういった物が嫌いなわけではないし、流石にこの年齢になれば『自分に似合うもの』も理解できる。
分不相応より分相応。
それを間違いだと思ったことはないし、今も正しいと感じでいる。
だから、結婚相手もお見合いで似た価値観と金銭感覚の同じような人を選んだつもりだったのだ。
「ごめん、結婚できない。」
「……なんでですか?」
「その…君に結婚生活は生活だと言った手前言いにくいんだけど、
好きな人が出来てしまった。その子のことしか考えられないんだ。」
自分とよく似た眼鏡をかけた地味な男が頭を下げて述べた言葉に吉田善子はショックというよりも驚いていた。
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