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「どんな人なんです?」
「仕事とかもふらふらしてて、家事とかも何にも出来ない子なんだけど、
夢を追いかけていて…一生懸命でとにかく可愛い子かな?」
「…は…はあ、そうですか。」
定職があり、家事もそこそこできるつもりの私は可愛い女の子に完敗した。
彼とは二三言会話を交わし、喫茶店を出るとあっさり別れた。
悲しくて、悔しかった。
きっと私は自分に似た彼をそれなりに好きだったのだと思う。
恋ではないけど、不器用な自分と同じような人間を大事にしたいという気持ちはあったのだ。
少なくとも、『結婚は恋愛じゃなくて、生活だと思っています。』
そう言った彼の事をいいなとは思っていた。
好きというのは、
恋愛感情というのは、
可愛いというのは、
一瞬かもしれないのにそんな一瞬に全てを注ぎ込めるものだろうか?
もしも、そんなものがあるなら恐ろしいとさえ思う。
私はスマホを弄り、いつの間にか大学時代の友人に電話をかけていた。
私の仕事は平日休みで、今も平日昼間という時間帯だったが、主婦の友人なら忙しくとも迎え入れてくれるのではないかと考えたからだ。
電話口の友人からは赤ちゃんの喃語が聞こえたが、
「家に来てくれるなら話を聞くよ~」
と明るく言ってくれたのでその言葉に半泣きになりながら「行く」と言った。
シュークリームを買ってその足で彼女の家に行くことにした。
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