chapter1  それぞれの絶望

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宏文と柚葉が恋愛関係にあることに薄々気づいていた同級生たちは、彼らをいじめの標的にした。 宏文は集団で暴行されたり金をむしられたりし、柚葉はクラスの女子たちから徹底的に無視された。 二人共高校は無事卒業したが、過去に受けたいじめの傷は深く、今も心に後遺症が残っている。 宏文は柚葉のことが本当に大好きだった。こんな自分を兄兼彼氏として(した)ってくれ、料理などの家事をサポートしてくれている。柚葉をずっと守りたいと思っている。 仮にこの現実が辛く険しくて、心中することになったとしても。死んでも一緒にいたい。 彼らは親と離別し、いじめの後遺症もあって最近では強く死を意識し始めた。 もし自殺するなら絶対一緒に死のう。 永遠の愛を誓い合う約束をしていた。 「柚葉。面白いチャットルームがあるよ。入ってみようぜ」 「え、どれひろ兄」 宏文は柚葉にスマホの画面を見せた。 2人は『カノープス』の部屋へ入り、残された2つのハンドルネームから、宏文が『カストル』を、柚葉が『ポルックス』をそれぞれ選んだ。 すると『カノープス』から案内文が送られてきた。 「皆さん、お待たせいたしました。定員の7人が全て集まりましたので、これより皆さんでチャットを開始したいと思います。よろしくお願い致します」 2021年1月1日、午前1時15分。 役者は全て集結した。
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