chapter6   親愛

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「ありがとう。でも時々辛くなる。それにね、高校生の時の親友の自殺もまだ心残りなの。香帆っていうんだけど。あの子の死は今でも謎なの」 「親友か。俺、友だちとか全然いないけど、仲良かった人が突然いなくなるのはキツいよな…」 陽真莉は、答えずに沈黙している。 その後、溜まっていたものを一気に吐き出すかのように慟哭(どうこく)した。 「うえーん、えん、えん…。たつき、くん。私、強がってるのかな?色んなもの抱えすぎて疲れちゃったのかな?お父さん、お母さん、香帆、周りの反応…。なんか無意識に涙が溢れてくるよ…。さっき井出崎に装置向けられた時だって、怖くてたまらなかったよ。竜樹くんがいなかったら私、もう…」 泣きじゃくりながらも、必死に話してくれる彼女を、俺はすっと抱き寄せた。 「大丈夫だ。俺も死ぬほど怖かった。本気で殺されるかと思った。でも、それ以上に助かりたいと願った。きみを、陽真莉を守りたいと。”生きて”脱出して、こんな絶望の闇のような孤独な人生でも、同じように苦しんでいる誰かと幸せになれるなら、まだ…生きていたい。もう一度やり直したいんだ、自分の人生を」 俺も力一杯想いを叫んだが、やはり涙を(こら)えきれなかった。 「あ、ありがとう。うえ、えーん。好きだよ…竜樹くん。本当に今日知り合ったばっかりだけど…私のこと、これからも守ってくれる…?」 「ああ。もちろん。俺も愛してる。俺がずっと、陽真莉を守るよ」 俺は泣き続ける陽真莉の唇に、そっとキスをした。 出会って間もない男女が、思わぬ極限状態に(おちい)り恐怖を共にすると、恋愛関係に発展しやすい。俺たちはましてや、メンタル的な病気を抱えている。お互いに惹かれ合うのも必然だろう。 そんなことが頭に過りながら、極寒であることも忘れ、俺たちはしばらく唇を合わせ続けていた。
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