chapter6   親愛

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         3 2021年1月2日、午後5時。 俺は東京の自宅に戻っていた。 あの星空の下で淡い接吻(せっぷん)を交わした俺と陽真莉は、その後悠太たちがいる民宿に泊まった。 翌日の朝、別れを惜しむようにそれぞれが連絡先を交換した。 『TSUDOI』(ツドイ)と呼ばれる、今メジャーなメッセージアプリでこの先連絡を取り合うことを約束し、6人はそれぞれの帰路につき、星知村を後にした。 陽真莉とは同じ東京で、帰り道も途中まで一緒。バスの中では談笑し合った。話は弾み、1月8日に陽真莉の年明け最初のカウンセリングがあり、どうしても一緒に来てほしいというので、同席することになったのだ。 これはカウンセラーに、“彼氏”として紹介するつもりなのでは? そう思うと、少しニヤニヤしてしまった俺であった。 俺には一つ気になることが残っていた。 自ら“起爆装置”で廃墟を爆破した、井出崎の生死だ。 星知村で検索すると、昨夜の爆発事故のニュースは載っていたが、井出崎に関する手がかりは書いていなかった。 そのことが気になって仕方がない俺は、何度もネットを開いて確認していた。 すると、新しいニュースがスマホに入ってきた。 号外で、星知村のあの事故の記事だった。俺は記事の全文を読み、涙が込み上げてきた。 「井出崎…。ダメだったか…」
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