chapter6   親愛

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         4 2021年1月8日、午後0時45分。 東京は相変わらず寒かったが、きれいに晴れた青空が広がっていた。 今日は約束した通り、陽真莉のカウンセリングに同席する。 最寄り駅で待ち合わせた後、俺は彼女に案内され、病院のカウンセリングルームに入った。 「失礼します」 部屋に入ると、40代半ばくらいのメガネをかけた男性が笑顔で立っていた。 「おや?陽真莉さん。彼は?」 「正木先生。紹介します。私のパートナーの神原竜樹さんです」 名前を呼ばれると、俺も少し緊張して挨拶した。 「はじめまして、神原竜樹と言います。陽真莉さんとは『シャウトボイス』のチャットで知り合いました。意気投合して、今日からお付き合いすることになりました。よろしくお願いします」 2日以来、『TSUDOI』で毎日やり取りをしていたが、2人で会うのは今日が初めて。お互いに今日を交際記念日に決めていた。 「それはそれは。おめでたいことだ。実は陽真莉さんは、以前からパートナー的存在がほしいと仰っていましてね。若くて好青年の方で、今後が私も楽しみです」 正木先生はそう言って、ニコリと笑った。 「そうなのか?」 俺が尋ねると、陽真莉は、 「もう先生ったら!恥ずかしいじゃない」 と、顔を赤らめた。 そうして陽真莉がいつもの話を先生としている間、俺もうんうんと聞いていた。 時間も終盤に差し掛かり、俺にも聞きたいことがあったので、先生に質問した。 「正木先生。僕、今働いてないんですけど、陽真莉さんと出会ってから就労意欲が出てきたんです。正社員として働きたいんです。でもうつ病を患ってて。何かいい方法はありませんか?」
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