chapter6   親愛

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俺は就労経験が、単発のアルバイトや日雇いの派遣などしかなく、今後の自分の人生を立て直すために、真剣に考えていた。 「そうですね。一般的な意見を申しますとね、まず障害者が通う"就労移行支援所"という場所があり、そこで生活リズムを整える所から始めるのがいいと思います。週5日、しっかりそこに通うことで気持ちも安定するし、就職活動もできる。その後、障害者の枠で就職するのがベストでしょう。ご自分の症状や問題点を、配慮してもらえますから」 正木先生に的確なアドバイスをされた俺は、安心して、 「障害者枠ですね。今まで知りもしなかった。まだわからないことだらけだけど、頑張ってみます。ありがとうございました!」 と、深々と頭を下げた。 帰り際、陽真莉がトイレに行くと言って先に退室し、俺もコートを着て部屋を出ようとした矢先、先生が話しかけてきた。 「神原さん」 「はい」 「陽真莉さんのこと、頼みましたよ。彼女の抱えている溝は大きい。ただそれを乗り越えた時、あなたたちは今よりもずっと成長することでしょう。どうか、2人で力を合わせて生きていってください。私も見守っていますから」 先生の思わぬ優しさに、胸が熱くなる思いがした。 「はい、2人で協力して生きていきます。本当にありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしています。失礼します」 最後に会釈をし、俺はカウンセリングルームを出た。 病院の出口で、先に外に出た陽真莉と合流した。 「正木先生、どうだった?優しい先生でしょ?」 「ああ。本当いい先生だな」 「うん。ずっとお世話になってるの。だから、まず先生に会わせたかった」 陽真莉はそう言って、俺のコートの裾を引っ張った。
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