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エピローグ その後
2ヶ月後__。
2021年3月中旬、『スターカフェ』にて。
ここは今年1月からオープンした新しいカフェで、内装が星空をイメージした作りとなっており、星に関する本が数多く置いてある。また天体観測などのイベントも定期的に催される予定で、これからが注目の店だ。
俺と陽真莉はあの星知村での一件以来、チャットのハンドルネームや星空の下での慟哭シーンといい、何かと星が絡んでいたので、少し興味を持ち始めていたのだ。
俺たちはオープンから既に何回か訪れ、デートの待ち合わせ場所にもなっている。
「たっつん、お待たせ」
俺が奥の席でスマホをいじっていると、“彼女”がパンフレットを持ってやって来た。
“たっつん”__。
いつの間にか、そう呼ばれるようになっていた。この呼び名の方が、親しみがあって好きだ。最も、大東柚葉だけは出会った初日からそう呼んでいたが……。
「次の4月にあるイベント、面白そうじゃない?『春の大三角を見に行こうツアー』だって。うしかい座のアークトゥルスも入ってるんだ、へえ」
陽真莉が熱心にパンフレットを読んでいると、俺が、
「同じく春の大三角のおとめ座の『スピカ』なんか、ハンドルネームに良さそうだな(笑)」
と、冗談まじりで笑いを誘った。
「懐かしいわね、元旦のチャットが。『シャウトボイス』自体も、最近ご無沙汰だもん。…あ、星知村のことが載ってるよ?」
陽真莉に言われ、俺は瞬時に“奴”のことを思い出した。
井出崎了。
チャットでは『カノープス』を名乗り管理人を演じ、“絶望ゲーム”と称して俺たちを廃墟に閉じ込め、“起爆装置”で殺そうとした“黒幕”__。
ただ奴がいなければ、俺は陽真莉と出会えなかった。悠太ら他の4人に巡り会えたのも、ある意味奴の“おかげ”である。
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