chapter1  それぞれの絶望

7/13
前へ
/60ページ
次へ
毎日書いたり書かなかったり、考えていた構想を白紙に戻したり…。 そんな作業を延々とループしていると、いっそ終わりにしてしまおうかという気持ちになるのだ。 悠太には書くこと以外、楽しみがなかった。 それを辞めようとすることは、彼にとっては“死”同然なのかもしれない。 悠太はいつも通り、スマホで『シャウトボイス』のチャットルームを開いた。 普段と違うルームに興味を惹かれ、誘われるように『カノープス』の部屋へと入室した。 4つの候補名が出た瞬間、これらが冬の星であることは知識のある彼にはすぐに解った。 今までがハンドルネームを選ぶ形式ではないことは悟ったが、そんなことは大した問題ではなく、彼は一番上の『ベテルギウス』を選択した。 ベテルギウスはオリオン座のアルファ星で一等星、赤く輝いているのが特徴の星である。 『カノープス』からあと3人揃うまで待つように告げられると、悠太はかけていたメガネを外し、目薬を指した。 残り3人。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加