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ハンバーガー
「揚げ物くさっ」
部室に入るなり透哉の鼻腔を刺激したのは、充満する揚げ物の匂い。
素早くごみ箱に目をやると、案の定ハンバーガーチェーン店の紙袋が捨てられていた。
「お前か、真矢」
その声に応える人影が一つ。
「僕だ」
「だろうな。この部室を使ってるのは俺らだけだし」
「不法侵入や幽霊の類じゃなくてよかったな」
「まったくだ」
ゴミを見るに、もうポテトとハンバーガーは食べ終わったようだ。
真矢の机にはジュースのカップ。先ほどまでハンバーガーセットが存在していたことを主張している。
「それにしても」
透哉が口を開く。
「真矢って意外と食のこだわりって無いよな」
「そうだな。今日も、ふと食べたくなったんで買ってきた」
「空腹時にこの匂いはキツい……。よし、買ってくるわ」
「決断が早い」
「善は急げ、だ」
そして透哉はハンバーガーを買うために、一歩踏み入れたばかりの部室を後にした。
残された真矢は本を読みながら、残ったジュースをストローで吸う。
だが、この後。
両手いっぱいにハンバーガーを抱えて帰ってきた透哉に、真矢は度肝を抜かれることになる。
真矢が呆れたように、感心したように言葉を漏らす。
「胃袋が強い」
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