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本能寺の変
それから、幾月か過ぎた頃。
本能寺に火の手が上がった。
作戦決行の場を本能寺に指定をしたのは信長本人だった。
信長は宣言通り、護衛を少なくしておいてくれたようだ。
光秀の軍は難なく本能寺に急襲をかけることに成功した。
「敵は本能寺にありっ!かかれぇ!!」
寺の中から悲鳴を上げながら次々と女子供が出てくる。
信長は「関係のない女子供は逃がしてやってくれ」と言っていた。
それは、無用な殺生は避けたい光秀としても有り難い提案だった。
「逃げるものは追うな!邪魔立てする者だけ斬れっ!!」
「「「はっ!!」」」
はじめ、本能寺に信長がいると知った家臣達は恐れ戦いたようだが、すぐにもう後戻りは出来ないことを悟ったのか、素晴らしい働きをしてくれた。
光秀は家臣達が邪魔者を排除している間に、予め信長に言われていた通りの部屋に向かった。
「来たか、光秀」
炎に囲まれ、敵に囲まれても尚堂々と座るその姿は、まさに武将そのものだった。
「信長様……本当にこれで良かったのですか」
光秀が問うと、信長はフンッ、と笑った。
「是非に及ばず。……儂が自ら望んだことだ」
「……」
「人間五十年。あと一年ではあったが、まぁほぼ五十年生きた。充分だ」
「信長、様……」
「感謝するぞ、光秀」
信長は目の前に置いた短刀を手に取った。
「さぁ、行け、光秀。少しの間ではあろうが、天下を楽しむが良いぞ」
「……はい。また向こうでお会いしましょう」
「……あぁ」
光秀の頬を何かが濡らす。
しかし、それは周りを取り巻く炎の熱ですぐに乾いた。
「では、信長様……ご武運を」
「光秀もな」
光秀は主君の最期の姿を目に焼き付け、その場を後にした。
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