11人が本棚に入れています
本棚に追加
──まるで、昼のようだ……。
光秀が去った後、腹を切った信長は薄れゆく意識の中、そんな呑気なことを考えていた。
それにしたって、本当に明るい。
見えないものなど何もないくらいだ。
「……皆の見る世界が、こんな風に明るくなるといいのだがな……」
自分が死ぬことによって、本当に自分の夢が叶えられる事になるのか分からない。
しかし、きっとこの先の事は光秀が、そして次に天下を治める者がしっかりとやってくれるだろう。
この炎の輝きに照らされた本能寺の中のような、明るい世の中になるはずだ。
「人間五十年。下天のうちをくらぶれば、夢、幻のごとくなり」
信長は炎の中に、皆が肩を寄せ合い、笑い合う姿を見た。
──しかし、それは幻。
自分は決して見ることのない世界。
その輝く未来をこの目で見れたらどれだけ良かっただろうか──……。
「……日ノ本の未来に、光あれぃ」
信長はそれを最期に、意識を手離した。
最初のコメントを投稿しよう!