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いま思えば、それは見せかけだった。
純粋に好きなものを好きと言えた自分は、いつの間にここまで落ちぶれてしまったのだろう。
本当のわたしは飯野さんへ思いを寄せていて、していることは本心を偽って、ごまかして、正宏くんを傷つけているだけ。
ほんの少しの出来心で?
わたしは心の底から、こんなことをしたかったのだろうか。
何度か眠れない日が続いて、今朝も。
正宏くんと共に夜を過ごし、罪悪感の森をさまよいながら、うっすらと目を開ける。知らぬ間に瞼が涙で濡れていた。泣く資格なんてないのに。現実で泣けないからか、寝起きは最近、悲しみのなかでうとうとすることが多かった。
付き合って四か月が過ぎようとしている。
カーテンの隙間から、朝の白み始めた空が見える。
わたしは思わず、あっ、と声を漏らした。
空があまりにも綺麗すぎて。
わたしにはない澄んだ色。どこまでも空色がとけていって、心まで清々しくさせるくらいの、真っ青。無性に泣けてきて、一筋の涙が頬を伝うのを許してしまっていた。
ああ……悲しいんだ。
悲しいんだ、わたしは。
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