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何度も何度も、喉の奥に引っ掛かっていた思い。
何度も何度も口にしかけて、取りやめた言葉。
良い時はぐっと込み上げて、気のない素振りを取られると、存在を消してしまう、好きという気持。
一緒にいればいるほどに高まっていく思い。
伝えられたらいいのに。
それがまるで、波に揺られるように大きくなっては小さくなり、循環し、大海原を漂い続ける。
怖いよ。
わずかなきっかけで、この関係さえも終わりそうで。
あなたの気持が見えなくて、不安になる。
そんなある日、いまから五か月前。三月。
花冷えのなか、友人に誘われた花見を兼ねた合コンへ、愚かだとしても、行かずにいられなかった。八方塞がりの迷路から逃れたかった。ほんのつかの間でも、飯野さんへ恋する自分から遠ざかりたかった。好きだけど、このままじゃ自分さえ見失いそうで、きっと友人にもわかるくらいだったのだろう、気軽に声をかけてくれて、その優しさに寄りかかって、行ってしまった。合コンに。
はらりと舞い散る桜を愛でながら、ひとときの安らぎがじんわりとわたしの胸のなかにひろがっていくのを感じていた。知らぬ間に、声をあげて笑っていた。
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