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わたしはそこで遠野正宏くんと出会った。二十四歳。同い年。映画や本の好みが似ていたわたしたちは距離が縮まり、これまで友人であったかのように意気投合して、瞬く間に突き抜けて、その日の夜、勢いのままわたしと彼はつながった。我を忘れたかった。飯野さんと付き合えないのだからと、偏狭な考え方しかできない自分もいた。その鬱積した泥が、アルコールをとることで手に負えないくらいに膨れ上がって、何かで弾けさせたかった。いますぐに。
わたしはここにいる。
わたしは存在しているよ。
誰か見つけて。
この広い海のうえで漂流している。
だから――
体を重ねるなかで、わたしは存在意義を見出したかったのかもしれない。でも、それではあまりにも自堕落すぎて。正宏くんにすまなくて。
けれど、しがみつきたくて。
エネルギーの塊のような正宏くんのむき出しの感情に、つかまっていたかった。
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