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「……とにかく、起きて。もうみんな来るよ」
放っておいて恥をかかせちゃえばよかった。
さっきの反応。きっと、“氷の君主”でさえ、私についての噂話は知っているのだろう。
まだ言いたいことはあるけれど飲み込み、瀬戸くんに背中を向けてまたスイッチを目指し始めた。けれど、背中には思いもしない言葉が飛んできた。
「君の動画、雑だよな」
この言われ方は初めてで、なんて反応したらいいか分からなくなり、スイッチの前で足を止めた。
「……雑?」
「あんな1発勝負で撮りました動画、美しくない。照明も明るすぎて曲の雰囲気に合ってないし、スマホで撮った音声なんて聴くに絶えない。視点も最悪」
私を真っ直ぐ見据えた瀬戸くんのその言葉は、私自身をバカにするわけでも、非難するわけでもなかった。
こんなふうに、辛口であっても率直な感想を言ってくれた人は初めてで戸惑っていると、生徒たちのざわめく声がすぐ側まで近づいているのに気付き、慌てて電気をつけた。
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