1 君と呼ぶひと

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その日は気づけば、瀬戸くんを目で追いかけていた。去年はクラスが違ったし、彼のことは学年トップの成績ということ以外よく分からない。でも、さっきは“氷の”というだけある鋭角な言い方だった。 私の席はクラスの真ん中辺り。瀬戸くんの席は窓際の1番前。授業中寝ているのも、ふざけてるのも見たことないのに、どうしてあんな所で寝ていたのだろう? 思い返せば、1限の授業に彼の姿はなかったかもしれない。学年トップだし、授業なんて受けなくても余裕なのかな? 1日観察した結果。 瀬戸くんは休み時間も一人で本を読んでいることが多かった。漫画だったらギャップだなぁと思って、通りすがる振りをして覗いてみたけれど、イメージ通り文字がずらりと並んでいる本だった。 イケメンらしく可愛い女子と話すどころか男子とふざけたり笑い合ったりなんてこともなく、そんな彼に声をかける生徒もほとんどいなかった。
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