1 君と呼ぶひと

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「瀬戸くん、今日一緒に帰ろう?」  瀬戸くんは、私の目の前にあったノートをそっと閉じると、まるで妖怪でも見るみたいに怪訝な顔で私を見ながら言葉をなくしてしまった。  その上、そんな私の行動にクラスが少しザワついてる。だめ……だったかな。 瀬戸くんの嫌そうな顔が“迷惑だ”って訴えてくるようで、もう謝ってしまおうと思ったけれど。 「……いいけど」 「えっ、いいの?」 “氷の君主”って言われてるくらいだし、絶対に断られることを覚悟した瞬間だったから、私の方が驚いてしまった。 「何、誘っておいて」  瀬戸くんは不機嫌そうに筆記用具をしまってカバンを準備し始める。 「ううん、嬉しくて」 喜ぶ私なんて特に気にしない瀬戸くんは、あっという間に準備を終わらせて、しゃがんだままの私を置いて席を立った。うん、氷の君主、うん。そんな感じ。
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