1 君と呼ぶひと

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「ううん、私が飛び出そうとしたから。ごめんなさい。またね」 「はは、気をつけろよ。またな、詩葉」 何ともない振りをして紘人の笑顔に手を振り、瀬戸くんを追いかける。 久しぶりに紘人と話したけれど、まだ名前で呼んでくれるんだって、少し嬉しくなってしまった自分を抑え込んだ。 2大イケメン、なんて騒がれていたけど、紘人は軽音部でギターボーカルを担当する華やかな一面があって、フレンドリーなので誰とでもすぐに打ち解けるタイプ。それに対して、瀬戸くんはあまり人と関わらないし、関わりたくても濃いめの塩対応……。性質は真逆みたい。 校門から出ると、駅までは桜並木の一本道だ。部活動が盛んな学校なので、放課後すぐのこの時間は生徒のあまりいないアスファルトの緩い坂道を下っていく。 瀬戸くんは身長158cmの私よりも頭1つ分以上高いから当然足も長くて、彼の隣に並ぶために少し早足にする。
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