1 君と呼ぶひと

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桜駅に着いた。田舎らしい小さな駅。 群馬県の大人の移動手段はほとんど車だから、利用者はあまり多くなく高校生が大半。さらに放課後すぐのこの時間帯は、部活動の時間だから学生も少ない。 静かなホームで瀬戸くんと電車を待つ。グレーのブレザーの制服に緑のネクタイを身に付けて並んで立つ私と瀬戸くん。昨日までは話したこともなかった男子なのに、会話が途切れても気を遣わず、そして遣われないこの雰囲気が心地いい。 「瀬戸くん、部活入らずに帰ったらいつも何してるの? 勉強?」 「……バイト」 「えっ?」 予想外すぎる答えに、声が裏返った。 アルバイトは校則で固く禁止されている。 「冗談」 冗談って……。 瀬戸くんが意味のない冗談を言うことも、堂々と校則を破ることも、どちらにしても結びつかない。 クールにすました表情からも、特に何も読み取れなかった。 「てか君こそ、なんでいきなりYouTuber目指してんの?」 「……あははっ」 「何」 私が思わず笑ってしまうと、瀬戸くんは怪訝な顔をした。 だって、私、YouTuberを目指してるように見えてたなんて。
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