プロローグ~旅立ちの日~

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この半年で、私の人生はがらりと変わった。 もがいて、苦しんで、光を見つけて、突き進んで、たくさんの経験をした。 いろんな気持ちを知って、いろんな気持ちを隠してきた。 今まで何でもなかった当たり前なことが、私にとって宝物だったということも、嫌というほど思い知ったよ。 私は今、こんなに辛くて、寂しくて、壊れてしまいそうなのに、今日も世界は何も変わらない。 それでも私が今、絶望せずに心の奥には達成感さえ灯って、先の分からない未来に希望を持てるのは、君がいてくれたから。 誰よりも私に厳しかった君が、誰よりも私を認めてくれたから。 「詩葉。10時にはお父さんが迎えに来るから、そろそろ用意してね」 がらんとした、何も無い私の部屋。ドアの向こうから、お母さんの優しい声がした。 泣き腫らした目を擦り、真ん中にぽつんと敷かれた布団から起き上がってカーテンを開けると、空はどこまでも高く青く澄み渡っていた。
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