1 君と呼ぶひと

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「ピンクにします」 透き通ったピンク色のピックを手の平に乗せた。うん、やっぱり。桜の花びらみたいで可愛い。 ちょっぴり泣きそうになった。 「はいよ、ところで君、紘人の彼女だよね? 久しぶり」 レジへ向かうお兄さんの何気ない言葉に、心臓がドキッと跳ねた。私の顔、覚えてたんだ。なんて答えたらいいのか少し悩んで、返事をする。 「えと……今は友達です」 “詩葉もギター、弾いてみれば? 俺教えるよ” 鮮明に蘇ってきてしまったあの時の紘人の優しい笑顔を、ふるふると頭を振って吹き飛ばした。 「そうだったか。悪い悪い。でもなお姉ちゃん、ギターの練習はほどほどにしときな」 「え?」 「指、そのままいくと血出るよ?」 「あ……はい」 まだ慣れない指を酷使して弦を抑えることで、赤紫色に線の入っている左手の指をそっと隠した。少しづつ練習を積めば、だんだんと指の皮が固くなってギター指になれるみたいだけど……。 「ピックが折れるほど練習するのも賛成しかねるよ、俺はね」
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