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「……ははっ、やっぱり詩葉はすごいな。俺の心がすぐバレる」
「そんなんじゃないよ。ちょうど昼休みに菜々から噂のこと聞いたばかりでね、モヤモヤしてたの」
そんなに嬉しそうに、私の大好きな笑顔で笑わないで。本当の気持ちを、言ってしまいそうになる。
***
紘人の彼女だった期間はたった3ヶ月だった。それでも私には初恋で、初めての彼氏で、2人で少しづつ歩むはずだった道を大切にしたかった。
『ごめんなさい、別れたいの』
『……分かった』
紘人はその理由を知りたがっていた。でも、紘人は優しいから。私が敢えて言わないことを無理には訊かないでいてくれた。
1番気づいてあげなきゃいけない時に、何も気付かないふりをして離れたのは私。
それでも、例えば『他に好きな人が出来た』とか、『好きじゃなくなった』とか、そんな嘘をつくのはどうしても嫌だった。
なのに本当の理由も言わない。すごく自分勝手に紘人を傷つけたのに、紘人は変わらず私に優しくしてくれる。
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