1 君と呼ぶひと

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1限の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。 クラスは賑やかさを取り戻し、いつもエネルギッシュな担任の後堂(ごどう)先生は、前の席の男子生徒と楽しそうに雑談を始めた。 「詩葉ちゃん、次パソコンだよね。行こう」 ふわんとした、優しい声。こんな私にも、たった一人だけ、心許せる親友がいる。 1学年10クラスもある中で、奇跡的に今年も同じクラスになれた尾崎菜々(おざきなな)。菜々とは、1年の時に席が隣で気が合い、自然と仲良くなった。 少しふっくらした背の小さな菜々は、二重瞼のつぶらな瞳を愛嬌たっぷりに輝かせて私の席までやって来ると、周囲を気にする素振りもなく、あっけらかんと声を掛けてくれた。 「詩葉ちゃん? どうかした?」 「あ、ううん! ふふっ、菜々ってば髪に消しカス付いてるよ」 「やだもう、とってー」 「うん、もうとったよ。ほら」 小さなカスを菜々に見せて、ふたりで笑い合う。 今の私は周りの目も言葉も気にしない。でも、孤立してしまったも同然の私とも、前と変わらずに仲良くしてくれる菜々の存在には、本当に救われてる。
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