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「私ね、詩葉ちゃんの言った通りなの。本当は美容師さんに憧れてる」
「そうなんだ! うん。すっごく向いてると思うよ、菜々はお話上手だし、ヘアアレンジだって──」
菜々の方を向いてすぐ、彼女の俯いた横顔を流れる涙に気づき、言葉が詰まった。
「でも、親には言えない。ガッカリされたくない」
「ガッカリ?」
「前に少しだけね、話そうとしたことがあるの……でも……。なんだかんだね、私は反対されるのも怖いんだ」
“公務員になるの”
寂しげな菜々の言葉を思い出して、察した。
「菜々の夢は菜々のものでしょう?」
「……うん……………そう、なんだけどね。昼休み終わっちゃうよね、食べよっか」
菜々は、聞いてもらったら少しスッキリしたと、なんの解決もしてないのにお礼を言って、お弁当を開いた。いつも冷凍食品が一切ない手間のかかったお弁当。菜々には菜々の事情があるんだと思う。でも……。
叶えられる夢を初めから諦めてしまうの?
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