300人が本棚に入れています
本棚に追加
/314ページ
今日1日ですっかり私の頭の中をとりまいた、紘人と菜々の事を整理しながら桜並木を下っていると、後ろから聞き慣れた単調な声がした。
「君、今日はサボった?」
振り向くと、瀬戸くんが長い足で私に追いつくところだった。今まで瀬戸くんからこんなふうに呼び止められたことはなかったなと、少し緊張する。でも、もう私と関わりあいになりたくないわけじゃなかったんだと分かって、嬉しくなった。
「私、保健室にいたんだよ。もう少し、体調を気遣ってくれたりとかないの?」
嬉しいから、反対に突っ張ってみると、瀬戸くんは少し困ったようにこめかみをかいた。その反応だけで、なんだかじゅうぶんだった。
「うそうそ、初めてのサボりだよ。瀬戸くん気づいちゃった?」
「……いつもうるさい人が午前まるまるいなければさすがに」
瀬戸くんは、私のちっぽけな反抗に気づいてくれてたんだ……。
「人をハエみたいに」
憎まれ口で対抗しながら前を向いたけど、口角は少し上がってしまった。
「ハエ……いい例えかもな」
「え、私、墓穴だった?」
「はは」
瀬戸くんは足の速度を遅めて、今日もまた私の隣を歩いてくれる。
最初のコメントを投稿しよう!