3 君と夢

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通されたのは、この前の瀬戸くんの部屋──ではなくて、2階から更に階段を上がったところだった。 「これって、屋根裏部屋?」 「うん、そう」 「うわぁ、本当にあるんだね! テレビ以外で初めて見た」 階段を登りきってすぐ目の前のドアを開けると、天窓と十字枠の小窓から温かな光の射す、何も無い部屋があった。天井は屋根の形でくり抜いたかのように斜めで、隠れ家みたい。まだ微かに新築の木の匂いがする。 重たかった荷物を床に置くと、十字枠の窓から外を眺めた。畑、近所のおうち、自動販売機、空が近い。遠くの田んぼまで見える。静かな町が、夕方前の柔らかな陽の光に照らされていた。 「この家を建てる時になにか希望はあるかって訊かれて、ふざけて言ったんだ。“屋根裏部屋とかいいね”って。そうしたら本当に出来てた」 「うわ、すごい。でも何もないね」 「自室は別にあるし、冗談のつもりだった」 「ふーん」 遠くに赤い電車が走っているのを見つけて気を取られていると、瀬戸くんはガサガサと買ったものを開封しながら重そうな口を開いた。
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