1 君と呼ぶひと

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えっ、怖い、なんでこんな所に? 誰……? 「あの!」 直接ではないにしても、この男子のせいで転んだことから、私は立ち上がって両腰に手をかけ、強気に声をかけた。 「……んー」 「授業! 始まりますよ!」 その男子はだるそうに起き上がって椅子に座り、眠そうな目でぼんやりとこちらを見上げた。 この人、同じクラスだ。えっと、名前…… 「どうしてこんな所で寝てるの? 瀬戸くん」 目が合った。 「……あ」 人の顔を見て、「あ」って。 起き抜けでそれはさすがに失礼でしょう? 瀬戸舜太郎(せとしゅんたろう)。 同じクラスの男子だけど、直接話しをするのも、ちゃんと顔を合わせるのも今が初めてだ。 切れ長な一重瞼の奥には黒の瞳が覗いている。筋の通った鼻。薄めの唇。短めの黒髪は、さらりと柔らかそう。 “氷の君主” 誰かがそう呼んでいたっけ。何気なく聞き流していたけど、妙なネーミング。 それにしても、こんな所で寝ている人が学年トップの成績だなんて、神様は不平等だ。
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