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えっ、怖い、なんでこんな所に? 誰……?
「あの!」
直接ではないにしても、この男子のせいで転んだことから、私は立ち上がって両腰に手をかけ、強気に声をかけた。
「……んー」
「授業! 始まりますよ!」
その男子はだるそうに起き上がって椅子に座り、眠そうな目でぼんやりとこちらを見上げた。
この人、同じクラスだ。えっと、名前……
「どうしてこんな所で寝てるの? 瀬戸くん」
目が合った。
「……あ」
人の顔を見て、「あ」って。
起き抜けでそれはさすがに失礼でしょう?
瀬戸舜太郎。
同じクラスの男子だけど、直接話しをするのも、ちゃんと顔を合わせるのも今が初めてだ。
切れ長な一重瞼の奥には黒の瞳が覗いている。筋の通った鼻。薄めの唇。短めの黒髪は、さらりと柔らかそう。
“氷の君主”
誰かがそう呼んでいたっけ。何気なく聞き流していたけど、妙なネーミング。
それにしても、こんな所で寝ている人が学年トップの成績だなんて、神様は不平等だ。
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