6 君の秘密

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シャツの袖で涙を拭ってから立ち上がり、全体がライトアップされたステージを見下ろした。 ドラム、キーボード、ベース、(全員知らないやつ)そしてギターボーカルの立花の4人組バンド。 ギター1本で弾き語りの清水詩葉と比べると、音に重厚感が出て表現の幅が広がるのは確かだと感じた。 以前は歌への関心が低かった。しかし、最近では映画の劇中に、サウンドだけでなく歌が入ることも増えてきている。歌声や詞が良ければ、そのシーンの魅力を格段に引き立たせられる。 改めてそのことを強く実感したのは、清水詩葉と関わり始めてからだった。この数日、君の撮影や映像の編集がなくなり手持ち無沙汰だった僕は、今まで何度も観た映画をまた観返していた。歌、サウンドを中心に。  見えてくる世界が、感じることが色鮮やかに変わった。音、音楽、歌、声、それらには人の心を動かす大きな力がある。  えらそうに、映画監督になりたい、なんて言っておきながら、こんな大切なことに気づけずいたなんて。
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