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私のYouTubeは、まるで一人芝居のピエロのようだった。校内中に広まったのは良かったけれど、バカにされてばかりだったし、菜々と瀬戸くん以外のみんなが冷やかしの目で見ていたかもしれない。路上での歌だってそう。
覚悟はしていたつもりだった。
でも、ここまで貶されるなんて思わなかった。
平気なフリをしていたけど、それはただ傷ついてないふりが上手いだけ。だから今まで、新しい動画を上げる勇気が出なかった。だって、私は真剣に歌っていたから。嘲笑われたくなんてないし、悪目立ちなんてしたくなかったから。
それでも動画を消さずにいたのは、私の歌う姿を、声を、音を、今の想いを、形として残しておきたかったから。
「君ってちゃっかりしてるよ」
瀬戸くんは初めから、みんなが目をそらす私まで汲み取ってくれる。
「ふふ、何から歌おうかなぁ」
感動して泣くのなんて照れくさいから、そんな自分は隠して瀬戸くんを見ると、整った顔で優しく微笑んでいた。
なんだ、そんなふうに笑えるんじゃない、と、心の中で悪態をついて、思わずドキドキしてしまった心臓を落ち着かせた。
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