嫌いなふりをした先輩へ

1/1
前へ
/1ページ
次へ

嫌いなふりをした先輩へ

 結局先輩には言えなかった。  今年の春に卒業した先輩。私が一年の時にこのサークルに入ってから、ずっと先輩を警戒してた。理由は何も難しくはない。私は男が嫌いで、先輩は男だったからだ。  明らかに避けたりする私に、先輩は上手く距離を取ったり気を遣ったりしていた。  腫れ物を扱うようにも見えなくはなかったけれども、私が困っているときには助けてくれたりもした。まともにお礼も言わない私を、よく見放さなかったものだと思う。  本当は卒業前にお世話になったお礼を言いたかった。でも、それは自分が自分に張った男嫌いというレッテルが許さなかった。  きっと誰も信じてはくれないのだろうけれども、ずっと前から先輩のことを信頼してたんだ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加