サンタの完全犯罪(不思議アリ)

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 12月に入って間なしのある夕方……  東京都新宿区で両親と暮す子町(こまち)カズヤは、近所に住んでいる叔母の西村サエの自宅に来ていた。  カズヤは6歳で、近くの認定こども園に通っていた。  西村宅は、庭のある三階建ての子町邸に比べると、やや見劣りする二階建て家屋だった。  この時、夫の秀明(ひであき)は、仕事から帰る前で不在だった。  秀明とサエの夫婦仲は円満だったが、子供はいなかった。  そのためか、サエはカズヤに、 「時々、遊びに来てね」  と言っていたので、この日もカズヤは遊びに来ていたのだ。  テレビを見ているカズヤに、食事の支度をしているサエが、 「カズヤ君、来年は7歳。いよいよ小学校ね」 「ん……」 「そして今月はクリスマスの月。サンタさんにプレゼントのお願いした?」 「えっ、サンタさんて誰?」 「あれ、クリスマスといえばサンタさんでしょう。ママから聞いたことないの?」 「聞いたことないよ。ママともパパとも、あまり話さないから……」 「そっか……。パパもママも、この時季は忙しいから……」 「それに、いつもケンカしてるよ。だからキライ」 「あら……それは、(ひど)いね……」  サエは溜め息をつきながら、テーブルにオムライスを置くと、 「さー、オムライスが出来たわよー」  するとカズヤは大喜びで、テーブに向かい、 「わーい! おいしそー!」  その時「ただいまー」と帰宅した秀明は、カズヤを見ると、嬉しそうな笑顔を見せた。
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