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「貴方は本当に可愛らしいわね。白くて細くて綺麗で。まるでお人形みたいだわ」
お父様とお母様は、私のことをいつもそう言った。
お城の隅の小さな部屋の中で、私は幼いころからずっとそうして可愛がられてきた。
服も、食べ物も、本も、音楽も、必要なものはなんでも揃っていた。不自由なことは何も無かった。
決して不幸せな生活では無かったけれど、窮屈で、退屈だった。
私は生まれてから十四年間、一度もこの部屋から出たことがない。
外の世界のことは何も知らない。
ただただ同じ一日を毎日毎日繰り返しているだけ。
それなのに、一年後には隣国の王子と結婚しなければならなかった。
見たこともない男の人と結婚するのが普通のことなのか分からなかったけれど、私にとっては疑問を持つ必要すら無かった。
何かを自分で決めることなど今までほとんど無かったのだから。
そして、きっとこれからも。
こんな退屈な生活を死ぬまで送り続けるのだと、そう思っていた。
彼が、現れるまでは。
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