0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
十四になった誕生日の夜、月明かりの下に彼は現れた。
私の部屋があるお城の塔はとても高くて、人が登ってこれるようなところじゃない。
それなのに彼は、私の部屋の窓を叩いて、ひょっこりと現れた。
「こんばんはお嬢さん」
夜の冷たい風に煽られてカーテンが舞った。
月を背に窓枠に立つ彼は、今までに見た何よりも美しく見えた。
「散歩でも、いかがですか?」
彼はたった一言そう言った。
私は彼の差し出した手を迷いなくとって窓の外へ一歩踏み出した。
冷たい夜の空を、彼は私の腕を引いて飛んだ。
生まれて初めて出た外の世界は、広くて、自由で、月と星の輝く素晴らしい世界だった。
一生忘れることは無いだろうと、そう思った。
最初のコメントを投稿しよう!