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彼の元へ来て一年がたった日、私の十五歳の誕生日。
その男は現れた。
その人は、私との結婚を約束されていた隣国の王子だった。
私のことを国へ連れて帰るために、ここまでやってきたのだ。
私は国へ帰りたくなんてなかった。
けれど、彼は言った。
「もう、お別れだ。僕と一緒にいてくれてありがとう」
私は嫌だと言った。
貴方をひとり置いて帰れない。
一人でいるのがどれだけ孤独で辛いことか、私は彼と過ごしたこの一年で知ってしまった。
彼だけをそんな孤独の中に置いていくことはできなかった。
やってきた王子は、鋭く光る銀の弓矢をかまえていた。
「貴女を助けに参りました、姫」
誰が、何のために私を助ける必要があるのだろう。
助けて欲しいなんて、一言も言っていないのに。
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