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穏やかで退屈で、問題のない毎日だ。
「いらっしゃいませ」
「……あと、128番」
「はい」
素早く背面のタバコラックに手を伸ばす。128番は真ん中の下から二列目だ。
ピッ……。
「すみません、そちら押していただけ……はい、ありがとうございます」
ピッ……ピッ。
「825円になります。あ、はい、お預りします。……175円のお返しです。あと、こちら抽選できますので……」
僕は厚紙でできた抽選箱を差し出す。ごそごそと適当にお客様は手をまさぐる。
「あ、はい。こちら抽選券ですね」
「ん、お兄ちゃん、捨てといて」
「はい」
「ありがとうございました。……お次の方、どうぞ」
ピッ……ピッ。
ピッ……ピッ……ピッ……袋、分けますか?
いらっしゃいませ。ピッ……ピッ……あ、はい、8番ですね。
……ピッ……ピッ……ピッ……615円になります……。ピッ……ピッ……辛子おつけしますか? ……ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……。
僕の毎日だ。
忙しいのか、忙しくないのか。それは分かんない。
大変なのか、大変じゃないのか。それも分かんない。
ただ、夜のシフトに入って見るOLさんやサラリーマンのお客様と比べると、うん、穏やかで退屈で、問題のない毎日を過ごしているのだろう。と、思う。ただ、それだけだ。
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