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「兎川よ、俺は今度、サンタクロースを捕まえようと思っている」
「は?」
木津の突拍子もない発言に、私は五秒ほど固まった。
大学構内、地下の資料室。
我が【親子丼同好会】にあてがわれた活動部屋で、私と木津は二人寂しく他のメンバーが集まるまでモンスターを狩るゲームのマルチプレイに興じていた。
「しかもクリスマスイブにだ。冬田ちゃんが彼氏とイチャこく日にサンタを捕獲し、クリスマスを破綻させてやろうと画策している」
「…………」
私はゲーム画面から一瞬目を離し、木津を見た。
あ、そういうことね。てっきりクリスマスにサンタがモンスターとして限定配信されるという私の知らない情報があって、それを捕まえる話をしてるのかと思った。
確かにサンタはクリスマスに限定配信される虚像だけどな。ははははは。
…………え? 待って、何?
捕まえる?
サンタを?
え、何言ってんのこいつ。
「え、ちょ、何お前……」
私はカシカシとボタンを連打し続けていた。
「本気で言ってんの? 本気でサンタクロース捕まえるとか言ってんの?」
「おう、この木津 大和、本気中の本気だ」
そう、この木津 大和、バカ中のバカだ。
それは今に始まったことではない。
木津は、同じ大学に通う冬田かすみちゃんという美少女に、大学入学以来2年以上も片思いしている。
──彼女にオラオラ系のいかつい彼氏がいるにも関わらずだ。
折を見ては「あれ絶対DV彼氏だよ。な?な?」などと偏見極まりない陰口を私にだけ吹かしまくった挙げ句、「いざ!お救い奉らん!」とばかりに、あわよくば別れさせようと計画するだけして何ら行動も起こせていないという、超絶ヘタレのつるつる脳みその持ち主is木津だ。
しかも冬田ちゃんを、可愛い見た目だけで天使かお人形かなんかと勘違いしている。冬田ちゃんはそれなりにエロい話もするし、彼氏もただオラついてるだけでDVなんかじゃないし。
ちなみに彼氏とは超絶ラブラブです。残念でした。
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