愛の病

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「そうか。まあ、いい。飴は久しぶりだしもらってあげよう」 「アルテミスさまが子供の頃に好きだったイチゴ味でございます」 「そうか」  そこで、興味がなさそうに返事をしながらもふわっと笑う姿に、グレイは口元に笑みを履いた。  グレイが仕えるアルテミス・カペーは錦糸(きんし)のように輝く金の髪、爽やかなエメラルドの瞳を持つ絵に描いた王子のような容姿をしている。 実際、カペー家はヴァンパイア全体を統べっていた時期もあるほど力のある一族だ。  王という絶対的な存在が現れてからは他と同じように一つの一族としての認識になったが、今でもフランスを拠点に土地をたくさん所有しカペー一族を束ねる直系の跡取り息子なので王子といってもいい。  末っ子で甘え上手。上にいる姉たちに遊ば…可愛がられ育てられ打たれ強く自由奔放な性格をしている。  そんな彼の愛すべき友人は同じヴァンパイアでスウェルビア一族のレンとジンの双子であり、彼らが好きすぎるあまり吉永(よしなが)美柚(みゆ)という少女を拉致したのは随分前のような気がするが、一年も経っていなかったりする。  すげなくされても愛を訴え、門前払いを受けても愛を訴え、いるのにいないように振る舞われ、相手にしてもらえない日々が続き、それでも愛を訴え続けた。  そして、とうとう彼らが住む日本まで追いかけ同じ学校に転校し、毎日毎日愛を訴え絡み続けた。
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